令和2年4月からの主な改正 Ⅰ
労働基準関係 編

<令和2年4月からの主な改正 Ⅰ>

① 時間外労働の上限規制

2019年4月1日に施行された法律が、1年間猶予されていた中小企業にも適用される。

  • 休日労働を除く時間外労働の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、 臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
  • 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
    時間外労働 ・・・年720時間以内
    時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
    とする必要があります。
  • 原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。
  • 法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。

厚生労働省 働き方改革特設サイト 時間外労働の上限規制
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html


② 賃金等請求権の消滅時効期間の延長

「民法の一部を改正する法律」が施行される目前の令和2年3月27日、「労働基準法の一部を改正する法律」が成立しました。改正民法では、使用人の給与に係る債権(1年)など、業種ごとに異なる短期消滅時効を廃止し、原則5年(権利を行使できることを知らなかった債権は、知った時から10年)の消滅時効期間に統一される。
 一方「労働基準法の一部を改正する法律」においては、改正民法と同様に賃金等請求権の時効期間を5年に延長すると定めたものの、企業側の負担増加と労働者保護とを勘案したうえで、経過措置としてその期間を当分の間3年とした。なお、退職手当は5年、災害補償及び年次有給休暇等は2年と、各請求権は現行の消滅時効期間を維持する。

改正事項現行改正当分の間
賃金請求権の消滅時効2年5年3年
付加金の請求時効2年5年3年
賃金台帳の保存期間3年5年3年

 新たな消滅時効期間(当分の間3年)は、令和2年4月1日以後に賃金支払日が到来する賃金請求権について適用される。
 賃金請求権が延長されたことで、労働者保護の拡充がなされたことは大変喜ばしいことである。一方で、時間外労働や休日出勤など、基本的な手当の管理を曖昧にしている事業主にとっては、身の引き締まる改正である。あってはならないことではあるが、今後、退職した職員から過去5年分の時間外労働手当を遡って請求されるケースも起こりうるのだから。

(参考)
 特定社会保険労務士が関わる紛争解決手続代理業務のデータ(出典:日本の労使紛争処理制度における社会保険労務士の存在意義、著者 村田毅之)を見ると、事件の内容としては「退職・解雇・雇止め」「セクハラ・パワハラ・いじめ」「賃金・割増賃金・退職金」が上位を占めており、その中でも、有額回答のあった和解金額の最高金額は1500万円であった。

法務省 桃太郎と学ぶ民法(債権法)改正後のルール
http://www.moj.go.jp/content/001311772.pdf
第160回労働政策審議会労働条件分科会 参考資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000614656.pdf


③ 労災保険の介護(補償)給付額の改定

介護を要する程度の区分に応じ、介護(補償)給付の額は以下の通りになります。
(1)常時介護を要する方
・最高限度額:月額166,950円(令和元年度165,150円)
・最低保障額:月額72,990円(令和元年度70,790円)
(2)随時介護を要する方
・最高限度額:月額83,480円(令和元年度82,580円)
・最低保障額:月額36,500円(令和元年度35,400円)

厚生労働省 令和2年度介護(補償)給付・介護料の最高限度額・最低保障額の改定について
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000611472.pdf