年金関係 編

年金関係編

<令和2年4月からの主な改正 Ⅶ>

① 年金額の改定

 令和2年度の老齢基礎年金の額は781,700円満額(月65,141円)になりました。前年の額は780,100円だった為、1,600円のプラスです。なお、実際の振込は6月分からになります。
 令和2年度は、年金額改定に用いる物価変動率0.5%)が名目手取り賃金変動率0.3%)よりも高いため、新規裁定年金・既裁定年金ともに名目手取り賃金変動率(0.3%)が用いられました。さらにマクロ経済スライド調整率▲0.1%)が乗じられることになり、改定率は0.2%となりました。
 その他、在職老齢年金の支給停止調整変更額などについては、変更がありません。

[令和2年度新規裁定者の年金例]令和元年度(月額)令和2年度(月額)
国民年金
(老齢基礎年金満額:一人分)
65,008円65,141円
厚生年金※
(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)
220,266円220,724円
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

新規裁定者に係る改定率の改定(現行)

 国民年金の給付は、社会情勢に準じて毎年度改定されます。その際、68歳となる年度前の受給権者については、新規裁定者に係る改定率が用いられ、原則名目手取り賃金変動率を基準に改定されます。例えば、現在67歳で令和2年10月30日に68歳の誕生日を迎える方の場合、令和2年度は該当しません。

(原則)名目手取り賃金変動率 = (2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率) X (前年の物価変動率) X (3年度前の可処分所得割合変化率)
[令和2年度の場合]
0.3% = ▲0.1%(2016年〜2018年度の平均) X 0.5%(2019年) X ▲0.1%(2017年)

(例外)名目手取り賃金変動率が0を下回り、かつ物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回った場合は、物価変動率を基準とします。ただし、物価変動率が0を上回る場合は、0(前年度水準)を基準とします。
[0 ≧ 物価変動率 > 名目手取り賃金変動率の場合] ※物価も下落、賃金も下落
例)物価変動率▲0.1% 名目手取り賃金変動率▲0.3% の時は、▲0.1%を基準とします。
[物価変動率 > 0 > 名目手取り賃金変動率の場合] ※物価は上昇、賃金は下落
例)物価変動率0.3% 名目手取り賃金変動率▲0.2% の時は、0を基準とします。

68歳となる年度前新規裁定者改定率(原則)名目手取り賃金変動率
(例外)名目手取り賃金変動率が0を下回り、かつ物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回った場合は、物価変動率を基準とする。ただし、物価変動率が0を上回る場合は、0を基準とする。

基準年度以後改定率の改定(現行)

 新規裁定者改定率に対して、68歳となる年度以後の受給権者(既裁定者)については、基準年度以後改定率が用いられ、原則物価変動率を基準に改定されます。例えば、現在67歳で令和2年10月30日に68歳の誕生日を迎える方の場合、本年度は該当します。

(原則)物価変動率 = 物価の動きを示す指標として、総務省が公表する「消費者物価指数」が使われています。
[令和2年度の場合] 0.5%(2019年)

(例外)物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、かつ名目手取り賃金変動率が0以上となる場合は、名目手取り賃金変動率を基準とします。ただし、物価変動率が0を上回り、かつ名目手取り賃金変動率が0を下回る時は、0(前年度水準)を基準とします。
[物価変動率  > 名目手取り賃金変動率 ≧ 0の場合] ※物価も上昇、賃金も上昇
例)物価変動率0.3% 名目手取り賃金変動率0.1% の時は、0.1%を基準とします。
※令和2年度は『物価変動率 0.5% > 名目手取り賃金変動率 0.3% ≧ 0』となり、名目手取り賃金変動率が基準となりました。
[物価変動率  > 0 > 名目手取り賃金変動率の場合] ※物価は上昇、賃金は下落
例)物価変動率0.3% 名目手取り賃金変動率▲0.2% の時は、0を基準とします。

68歳となる年度以後基準年度以後改定率(原則)物価変動率
(例外)物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、かつ名目手取り賃金変動率が0以上となる場合は、名目手取り賃金変動率を基準とする。ただし、物価変動率が0を上回り、かつ名目手取り賃金変動率が0を下回る時は、0を基準とする。

マクロ経済スライド(現行)

 政府は、国民年金事業の財政が財政均衡期間にわたって均衡を保つことができないと見込まれる場合に、調整期間を定めて給付額(付加年金は積立方式の為除かれます。)を調整します。その際に用いられるのが、マクロ経済スライドです。
 マクロ経済スライドとは、被保険者数の減少平均余命の伸びに基づいて調整率が設定され、賃金と物価の変動がプラスとなる場合に、その分を改定率から控除する仕組みです。マクロ経済スライドによる調整を実施することで、年金の給付水準の確保につながります。

マクロ経済スライドによるスライド調整率 =(公的年金被保険者の変動率)X(平均余命の伸び率)
[令和2年度の場合]
▲0.1% = 0.2%(2016年〜2018年度の平均) X ▲0.3%(定率)

 なお、物価や賃金が下落し続けた場合、給付水準が急降下する可能性があります。その為、給付水準が現役世代の手取り収入額に対する比率(所得代替率)の50%を下回ると見込まれる時には、50%を上回る措置を講ずるとされています。


年金額の改定ルールの見直し

 支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から、令和3年4月以降、賃金変動が物価変動を下回る場合には、賃金変動に合わせて改定することが徹底される予定です。
[0 > 物価 > 賃金の場合]
現行では物価が基準とされますが、見直し後は賃金が基準とされる予定です。
[ 物価 > 0 >賃金の場合]
現行では 0 が基準とされますが、見直し後は賃金が基準とされる予定です。


在職老齢年金

 60歳〜64歳の受給者の場合、賃金と年金の合計額が、支給停止調整開始額を上回る場合には、賃金の増加2に対して年金額が1支給停止されます。また、賃金が支給停止調整変動額を上回る場合には、増加した分だけ年金が支給停止されます。支給停止調整開始額は新規裁定者の年金額の改定に応じて、支給停止調整変動額は名目賃金の変動に応じてそれぞれ改定されます。
 65歳以降の受給者の場合、賃金と年金の合計額が支給停止調整額を上回る場合には、賃金の増加2に対して年金額が1支給停止されます。支給停止調整額は名目賃金の変動に応じて改定されます。

60歳〜64歳の
支給停止調整開始額
28万円
60歳〜64歳の
支給停止調整変動額
47万円
65歳以降の
支給停止調整額
47万円
令和2年度在職老齢年金

日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200401.html
日本年金機構 年金額の改定の現行ルール(令和2年度まで)
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/kyotsu/gakukaitei/201805-8.files/C.pdf
日本年金機構 年金額の改定ルールの見直し(令和3年4月~)
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/kyotsu/gakukaitei/201805-8.files/D.pdf
厚生労働省 令和2年度の年金額改定についてお知らせします
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000588114.pdf


② 国民年金保険料の改定

 令和2年度の国民年金保険料は月16,540円となり、令和元年度の16,410円から130円引き上げられました。
 国民年金の保険料は、平成29年に上限の16,900円に達しました。さらに次世代育成支援のため、平成31年4月から自営業者などの第1号被保険者に対して産前産後期間の保険料免除制度が施行されることに伴い、令和元年度分より保険料が月100円引き上がりました。よって、法律に規定された令和2年度の保険料額は月17,000になります。その額に、平成16年度以降の物価や賃金の変動を反映した率(0.973)を乗じることにより、実際の保険料額は月16,540円となります。

 なお、各種前納制度を用いれば、最大で15,000円以上の保険料を抑えることができます。

厚生労働省 令和2年度における国民年金保険料の前納額について
https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/000588188.pdf


③ 年金生活者支援給付金額の改定

 令和2年度の年金生活者支援給付金の額は、2019年の物価変動率に基づき 0.5% の引き上げとなりました。年金生活者支援給付金の対象者は、低年金・低所得の年金受給者になります。なお、実際の振込は6月支払い分からになります。

老齢年金生活者支援給付金5,030 円※
障害年金生活者支援給付金1級6,288 円
障害年金生活者支援給付金2級5,030円
遺族年金生活者支援給付金5,030 円
※実際の金額は保険料納付済期間等に応じて算出される。

日本年金機構 「年金生活者支援給付金」について
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/shienkyufukin/20190805.html