一人ぼっちで見る夢は、いつまで経ってもただの夢。
みんなで一緒に見る夢は、いつの日にか現実となる。

IMAGINE

「…では、これまでに17人が新型コロナに感染していた事がわかり、院内感染という深刻な状況を招いています。…16日こちらで勤務する看護師3人の感染が確認されたのに続いて、…14人の感染が確認されました。いずれも消化器内科病棟の看護師、患者だということです。…現在、消化器内科病棟については閉鎖をしていて、医師や看護師以外の立ち入りは禁止されています。検査などで他の病棟へ行かなければならない場合は時間帯をずらしたり別ルートを使ったりして、消化器内科病棟と他の病棟の人との接触をゼロにするなど厳戒態勢をしいています。…には道内各地からがん治療のために入院、通院されている方が大勢います。その中でのクラスターの発生。命にかかわる最前線のがん治療にも、深刻な影響を及ぼしかねません。」

北海道ニュースUHB (20/04/17)

 知り合いの保育士さんへ、久しぶりにラインを送った。主な内容は “保育所等における新型コロナウイルス対応関連情報” や “職員や保護者らが利用できる助成金・支援金の情報” など、厚生労働省が日々更新する最新のトピックスだ。間も無くして、私の雑な文章にもかかわらず、お礼とともに丁寧な言葉で返信があった。

 彼女の保育園も御多分に洩れず臨時休園となり、要支援の子どもや特定職業従事者の子ども以外は原則登園を自粛してもらうこととなったらしい。しかし、公共施設は安全という妄想からなのか、家庭で過ごすよりも保育園における集団生活の方が、はるかに高リスクであることを保護者に伝えても、一定程度はどうしても子どもを預かって欲しいと懇願してくるという。

 職員の配置基準を考えながら、複数グループの輪番による交代出勤体制を急遽整え、濃厚接触者数を最小限に抑える。自治体と相談を密にして、衛生面、体力面、精神面、できる限りの危機管理対策を施している。そんな複数回の掛け合いの中で、彼女はしきりに こう吐露していた。
『医師や看護師の子どものことが、本当に心配です。』
 やはり園内感染を完全に防ぎきれない以上、開園を継続できていることは単なるラッキーでしかない。医療従事者の子どもが感染すれば保育園は閉鎖、あるいは保育園関係者が感染すれば保護者の勤める医療機関に影響が出る。医療従事者の子どもに変な目が向かないよう配慮することはもちろんだが、想定外の事態に備えつつ、少なくとも自分だけは不安な態度を見せたくない。そして、体制維持の問題以前に、何よりも子ども達に感染して欲しくない。
 新型コロナウイルスがあろうとなかろうと、普段から子ども達の生命を育んでいる保育園、そこに長年携わる関係者がこれほどまでに心配するのだから尋常ではない。

 そんな中、彼女の娘さんがようやく社会人1年生になったことを思い出し「頑張ってください」と文末に添えた。すると、『今は家にいません。入院しています。』との返信が。

” 骨髄性白血病 “

 昨年末に発病してから数度の抗がん剤治療を受けたものの、その副作用で激しい吐き気や高熱が続き、落胆の日々に親子共々涙に明け暮れたという。どうにか容態が安定してきたところで、近く臍帯血移植に踏み切るらしい。
 けれども、新型コロナウイルスの対応に追われ、入院先の病院は通常医療にも相当支障をきたしているとのこと。血液内科の入院患者が病棟に隔離されており、私物や着替えなども、指定された窓口に預けなくてはいけない。本来なら娘さんの手を取って一緒に痛みを分かち合いたいのに、今はそれすらできない。彼女の連ねた綺麗な文脈から、その切迫した様子が眼に浮かぶようだった。

 一方で、混乱する状況を静観するように、娘さんからは気丈な言葉を投げかけられた。
『お母さんは、保育園の子ども達を優先してあげて。』

 そのやりとりを聞いた私は、オロオロと何とも ひ弱な文章を返してしまった…。
「直接面会が叶わない時間は、非常に長く感じられると思います。とはいえ、娘さんには少しでも多く 親の存在を感じて欲しいです。それを彼女の力に変えてもらい、最高峰の医療を信じて、太陽の下で散歩ができる日を楽しみに待ちましょう!快気祝いには駆けつけますので、声をかけて下さい。」


『医療関係者の方々には、感謝しかありません。娘はそろそろ無菌室に移動して、移植に向けた治療が始まります。健康な時には、自分の価値観を押し付けるようにウダウダと言ってしまいましたが、今は自分の命に代えてでも娘を守り抜きたいと思っています。そして、移植手術の先にある “普通の日々” を、家族みんなで想像しています。色々励ましてくれて、ありがとうございます😊』

連なる子ども

 どうやら この新型コロナウイルスは、防護服でも身にまとわない限り、一般人が生半可な予防をしたところで感染リスクはゼロにはならないようだ。したがって、不幸にも感染したとしても、本人が責められる理由はない。現在進行形で感染者が増え続けている今、責められるべきは、人でも、組織でも、国でもなく、ウイルスのみ。誰も咎められない状況に、もはや自身への感染はある程度覚悟して、重篤化しないことを祈りながら周りに移さないよう努めたい、そんな諦めにも似た心境に陥ってしまう。
 予想を超える深刻な事態に、情報の錯綜は多少致し方ないとも思えるが、終始一貫して叫ばれていることは “人との接触を減らしなさい” という御触れである。その結果、多くのプロスポーツやエンターテインメントが余儀なく開催を断念する中、再開の見通しすら諦めて、たった一ヶ月二ヶ月の営業自粛で、会社の長い歴史にパタパタと終止符が打たれる。それと同時に、圧迫された生活の変化がもたらす弊害として、以前には兆候すら無かった家庭内DVや虐待、自傷行為、希死念慮など、新たな問題の発生が懸念されることも事実だ。

 しかしながら、
“店が開いているんだから仕方ないでしょ、リスクがあるとすれば負けることくらいだね。”
 パチンコに興じる人々…。
“家にいるとストレスが溜まっちゃって、今日遊びに来ても感染するとは限らないよ。”
 3密を逆手にとって、隣県の海岸に押し寄せる家族…。
 そうなると 話はちょっと違ってくる。

 そのような人達を “愚かだ” とまでは思いません。依存症の病気なのかもしれないし、虐待予備軍の家庭なのかもしれない、そうでなくとも何らかの退っ引きならない事情があるのかもしれない。全ての角度から見ることができない以上、客観的に説き伏せられない理由は様々であろう。
 ただし、こと新型コロナウイルスとなると、憲法で認められた自由を主張する反対側のお皿には、かけがえのない命が乗っていることを前提に、あえて言いたいことがあります。

もう少しだけ “想像力” を働かせてみませんか。

 医者じゃないから、医療行為はできません。
 専門家じゃないから、感染防止のアドバイスもできません。
 不器用なので、マスクも作れません。
 お金に余裕がないので、寄付もできません。

 いえいえ、あなたのできる範囲で大丈夫です。

 何はともあれ、ただただ想像してみて下さい。

 天秤

 あなたが感染したら、あなたの家族は、恋人は、友達はどうなるのか。
 
 自分の大切な人を、あなたが苦しめるかもしれない。
 
 自分の大切な人でなくとも、見知らぬ人達を無差別に苦しめるかもしれない。
 
 ニュースで流れる陽性者の数、そのうちの一人を苦しめたのはあなたかもしれない。
 
 あなたが原因でクラスターが起きれば、一生後悔するかもしれない。
 
 今 人が動けば、さらに経済は悪化する。
 
 今後 人が戻れば、きっと経済は復調する。
 
 あなたの小さな思いやりが、流れ流れて人を救うことになる。

 想像できれば、自ずとあなたの行動が、そのまま社会貢献に繋がると思います。

 一人ぼっちで “普通の日々” の夢を見ても、それはいつまで経ってもただの夢でしかありません。でも、みんなで一緒に夢を見ることができれば、それはいつの日にか必ず現実となります。
 だから、みんなで頑張りましょう!

A dream you dream alone is only a dream

A dream you dream together is reality

Imagine all the people living life in peace

Yoko Ono
連なる大人

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