雇用保険 編

雇用保険編

<令和2年4月からの主な改正 Ⅲ>

① 雇用保険料率引き下げ暫定措置の延長

 令和2年3月31日「雇用保険法等の一部を改正する法律」が国会で成立しました。それにより、失業等給付にかかる雇用保険料率を0.2%引き下げる等の暫定措置を、令和3年3月31日まで延長することになった。一般の事業における雇用保険料率は、0.9%に据え置かれた。

  • 期間:令和2年4月1日〜令和3年3月31日
  • 失業等給付の保険料率は次の通り。「一般の事業」においては、労働者負担・事業主負担ともに3/1000。「農林水産・清酒製造の事業」「建築の事業」においては、労働者負担・事業主負担ともに4/1000
  • 事業主負担である雇用保険二事業の保険料率は、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」で3/1000、「建築の事業」で4/1000
🅰労働者負担
(失業等給付・育児休業給付
の保険料率のみ)
🅱事業主負担①+②①失業等給付・
育児休業給付の保険料率
②雇用保険二事業の保険料率雇用保険料率
🅰+🅱
一般の事業3/1000
6/10003/10003/10009/1000
農林水産・
清酒製造の事業
4/1000
7/10004/10003/100011/1000
建築の事業4/1000
8/10004/10004/100012/1000
※園芸サービス、⽜⾺の育成、酪農、養鶏、養豚、内⽔⾯養殖および特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適⽤されます。

 育児休業給付に充てる保険料収入として令和2年度以降の雇用保険料率のうち4/1,000相当額を充てることとし、また育児休業給付に係る支出に対応する国庫負担を育児休業給付分の収入としている。

 令和元年12月13日付け”職業安定分科会雇用保険部会の参考資料”を見ると、上記のような記載がある。そこから推測すると、「一般の事業」における内訳は以下のようになる。

 失業等給付・・・・2/1000(労働者1/1000、事業主1/1000)
 育児休業給付・・・4/1000(労働者2/1000、事業主2/1000)
 雇用保険二事業・・3/1000(事業主3/1000)


 厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/000591657.pdf
第136回職業安定分科会雇用保険部会 参考資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000576458.pdf
厚生労働省 令和2年度雇用保険料率について

https://www.mhlw.go.jp/content/000617016.pdf

(参考)具体例
 一般の事業所に務める月給30万円の労働者の場合・・・事業主1800円 労働者900円

② 高年齢被保険者からの雇用保険料徴収 開始

 雇用保険の適用拡大に伴い、平成29年1月1日より65歳以上の労働者も雇用保険の適用対象となっていたが、経過措置として令和2年3月31日までは保険料の納付が免除されていた。よって令和2年4月1日以降、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、かつ31日以上の雇用見込みがある労働者であれば、年齢に関係なく原則雇用保険料が徴収されます。
 そのうち、65歳以上の雇用保険加入者を高年齢被保険者と呼び、離職した際には、要件を満たすことにより高年齢求職者給付金が受給できます。


 〜「高年齢求職者給付金」〜

 65歳以上の労働者が雇用保険に加入できなかった頃には、「高年齢求職者給付金」は1回しか受給できませんでした。しかしながら雇用保険の適用拡大により、65歳以上の労働者が就職と離職を繰り返しても、条件を満たすことでその都度受給できるようになりました。
 支給要件と支給額を示したものが、以下の表になります。なお、「失業中」、つまり”積極的に就職しようとする意志””身体的・環境的に、いつでも就職できる能力”があり、積極的に就職活動を行っているにもかかわらず、就職に就くことができない状態でなければ、受給資格はありません。

被保険者期間が6か月以上1年未満基本手当日額の30日分
被保険者期間が1年以上基本手当日額の50日分
 離職前1年間に雇用保険に加入していた期間が通算して6か月以上あること。賃⾦の支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算する。但し、病気やけが等により働けない期間があった場合はその期間を加えることができることがあります。

〜「高年齢求職者給付金」と「基本手当(いわゆる通常の失業給付)」〜

・令和2年4月30日に65歳の誕生日を迎えるAさんが、20年間勤めた会社を令和2年4月29日に定年退職した場合は、「高年齢求職者給付金」として、基本手当日額の50日分を一時金で受け取ります。一方で、Aさんが令和2年4月28日に自己都合退職した場合は、就職活動をしている間「失業給付」として、基本手当日額の150日分を認定日ごとに分けて受け取ります。受給期間は両者とも、離職日の翌日から起算して一年以内になります。

・「失業給付」の受給要件が、”離職前2年間に雇用保険に加入していた期間が通算して12か月以上”必要であるのに対して、「高年齢求職者給付金」の場合はその半分”離職前1年間に雇用保険に加入していた期間が通算して6か月以上”となっています。

・65歳以上の労働者であれば、年金を受給されている方も多いでしょう。「失業給付」の場合は、年金との支給調整がある一方で、「高年齢求職者給付金」は一時金の為、それがありません。つまり、年金と給付金の両方を受け取ることができます。

・現在では申請後7日の待機期間があり、さらに自己都合で退職した場合は3ヶ月間の給付制限があります。それらは「失業給付」「高年齢求職者給付金」どちらにも適用されます。

・その他、「失業給付」「高年齢求職者給付金」どちらも条件を満たすことにより、「育児休業給付金」「介護休業給付金」「教育訓練給付金」等の受給ができます。養子を授かった65歳以上の労働者が、「育児休業給付金」を申請することも当然可能です。また、生涯学習が叫ばれる今日、「教育訓練給付金」を活用して、新たなチャレンジに挑むこともお勧めいたします。

厚生労働省 雇用保険の適用拡大等について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000136394.pdf
厚生労働省 令和2年4月1日から、すべての雇用保険被保険者について雇用保険の納付が必要となります
https://jsite.mhlw.go.jp/mie-roudoukyoku/content/contents/000600403.pdf


③ 保険手続きの電子申請義務化

 令和2年4月以降に開始される事業年度から、資本金1億円を超える特定法人等が、社会保険・労働保険に関する一部の手続を⾏う場合は、原則電子申請が義務となりました。なお、社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定法⼈に代わって⼿続を⾏うことも可能です。

厚生労働省 2020年4⽉から特定の法人について電子申請が義務化されます。
https://www.mhlw.go.jp/content/000511981.pdf