障害者雇用 編

障害者雇用編

<令和2年4月からの主な改正 Ⅳ>

① 短時間の障害者雇用に対する特例給付金

 短い時間であれば就労可能な障がい者の雇用機会を確保する為、改正障害者雇用促進法の中に設けられた制度です。特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満で就労する障がい者)を雇用する事業主に対しての支援策となります。なお、法定雇用率の制度自体は変更させておらず、カウントの対象とはなっていません。加えて、法定雇用率の対象となる障がい者を一人も雇用していない事業主は、支給対象となりません。


対象障害者とされるの3つの条件

(A)障害者手帳等を保持する障がい者

身体障害者・身体障害者手帳
・都道府県知事が指定する医師又は産業医による診断書・意見書
知的障害者・療育手帳(都道府県により別の名称を用いる場合があります。)
・児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医若しくは障害者職業センターによる判定書
精神障害者・精神障害者保健福祉手帳

(B)1年を超えて雇用される障がい者(見込みを含む)

(C)週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障がい者

  • 週所定労働時間が10時間以上20時間未満であっても、実労働時間が10時間未満であった障がい者は対象障害者に含みません。
  • 週所定労働時間が20時間以上であったが、実労働時間が10時間以上20時間未満であった障がい者は対象障害者に含みます(なお、当該障がい者は障害者雇用納付金の申告申請において雇用障害者としてはカウントできません。)。

特例給付金の支給対象と支給額

事業主区分支給額
100人超  (納付金対象)7,000円/人月(≒調整金@27,000円×1/4)
100人以下(納付金対象外)5,000円/人月(≒報奨金@21,000円×1/4)
・申請対象期間に雇用した対象障害者の人月数(実人数)×支給単価
・支給上限人数は、申請期間に雇用した週労働時間20時間以上の障がい者の人月数
(重度のダブルカウント及び短時間のハーフカウントを行い、小数点以下は切り捨て)

 週20時間〜30時間の短時間労働者の雇用率カウント(0.5)等を加味して、支給額は障害者雇用調整金・報奨金の4分の1程度となりました。支給期間は限定しません。
 また、納付金の未納付がある100人超事業主や、申請書に記載のあった障がい者に対する適切な雇用管理の措置を欠いたことによる労働関係法令の違反により送検処分をされた事業主には、特例給付金が支給されません。


 特例給付金の申請と支給時期

事業主区分申請期間
100人超  (納付金対象)翌4月1日〜5月15日
納付金の申告、または調整金の申請と同時
100人以下(納付金対象外)翌4月1日〜7月31日
報奨金の申請がある場合は同時
・支給時期:10月1日〜12月31日

 申請先は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構です。申請対象期間は、申請年度の前年度4月1日から翌年3月31日までです。よって、令和2年度分の申請は、令和3年4月1日からになります。なお、申請対象期間の途中に事業を廃止した場合は、これまでの障害者雇用調整金・報奨金と同様、事業を廃止した日から45日以内に申請することを条件に、申請受理日から3ヶ月以内に特例給付金が支給されます。

厚生労働省 特例給付金の支給要件等について
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000535730.pdf
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 特例給付金制度のご案内
https://www.jeed.or.jp/disability/q2k4vk000002xvs4-att/q2k4vk000002xvub.pdf


② 優良な中小事業主に対する認定制度

 中小企業における障がい者雇用をより一層推進させる為、雇用体制の整備職場定着の取り組みなどが優秀な事業主を対象に、新しく認定制度が創設されました。
 中小企業の実雇用率を見ると、0.9%(情報通信業)〜3.1%(医療福祉)になっており、大企業の実雇用率に比べて大分ばらつきがあります。雇用ゼロ企業も、45.5人以上100人未満では93.7%100人以上300人未満では30.8%存在します。今回の認定制度は、こうした中小事業主における障がい者雇用の取り組みが停滞している事態を受けて、従来の制度的枠組みに加え、障がい者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起すると同時に、経営者の理解を促進し、先進的な取組を進めている事業主が社会的なメリットを受けることができるよう、創設されたものです。
(参考:厚生労働省 中小企業主の認定基準について)


目的

事業主身近なロールモデルの量産・可視化
労働者各認定事業主の取組・成果の可視化
事業主及び労働者社会的メリット等の確保・向上

認定メリット

  • 自社の商品、広告等への認定マークの使用
  • 求人票へのマークの表示
  • 認定マークの使用によるダイバーシティ・働き方改革等の広報効果
  • 障害のない者も含む採用・人材確保の円滑化
  • 好事例の相互参照・横展開
  • 地方公共団体の公共調達等における加点の促進 等

評価基準

  • 評価基準に基づき、20点(特例子会社は35点)以上を得ること。(取組関係で5点以上、成果関係で6点以上、情報開示関係で2点以上を得ること。)※満点は50点
  • 実雇用率が法定雇用率を下回るものでないこと。(雇用不足数が0であること) ※雇用率カウント後に45.5人未満となる事業主は要件を満たす。
  • 障害者(A型事業所の利用者は含まない。)を雇用していること。 ※A型事業所の利用者以外の障害者に関する取組状況を評価。
  • 障害者雇用促進法及び同法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと。

厚生労働省 中小事業主の認定基準について
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000552238.pdf
厚生労働省 障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度申請マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/11700000/000646750.pdf

 その他、法定雇用率に参入できない労働者をカウントしていた、いわゆる “障がい者雇用数の水増し問題” を踏まえ、具体的な確認方法の公表確認書類の保存(3年間)等も義務づけられました。さらに、運用に対する適切性のチェックが強化されたことに伴い、厚生労働大臣は、国や地方公共団体に対し、確認の適正な実施に関して勧告ができるようになりました。