介護保険 編

介護保険編

<令和2年4月からの主な改正 Ⅸ>

① 総報酬割の全面施行

 協会けんぽ 健康保険組合 などの医療保険者が納める介護納付金について、加入者数に応じて負担する仕組みである 加入者割 が採用されていた一方で、報酬額に比例して負担する仕組みである 総報酬割 が段階的に導入されていました。緩和措置が終了した令和2年4月からは、総報酬割 が全面施行されます。

 65歳以上からなる 第1号被保険者 については、原則 年金給付を受ける際に保険料が徴収され、そのまま市町村に納入されます(特別徴収)。一方で、40〜64歳からなる 第2号被保険者 については、加入する各医療保険者が賦課徴収し、当該徴収した保険料を 介護給付費・地域支援事業支援納付金(介護納付金)として 社会保険診療報酬支払基金 に納付します。その上で、社会保険診療報酬支払基金 は、各市町村に設けられた 介護保険特別会計 に対し、介護給付費交付金 及び 地域支援事業支援交付金 として交付します。

 2017年7月までは、各医療保険者が 第2号被保険者 から保険料を徴収する際に、加入者の人数に応じて納める額が決められていました(加入者割)。そこで問題視されていたことが、中小企業の社員を多く抱える 協会けんぽ と、比較的大企業で構成されている 健康保険組合 の負担割合でした。実際のところ、A保険者に加入する月平均20万円の人も、B保険者に加入する月平均60万円の人も、等しく約5,000円(労使折半)の保険料が徴収されており、所得水準の低い保険者ほど負担感が大きいものとなっていました。

総報酬割
表1 厚生労働省 総報酬割のイメージ

 2017年8月からは、共通の負担割合を求める 総報酬割 が段階的に導入され、2020年4月に全面施行となります。それにより、協会けんぽ は負担減、財政の豊かな 健康保険組合 は負担増となります(財政の乏しい健康保険組合は負担減になる可能性があります。)。その点において、健康保険組合連合会 は、組合の運営費及び組合員の手取りが減少することに対して危機感を表明しています。
 健康保険組合 と同じく負担増となるのが 共済組合 です。下記表2を見ると、健康保険組合 の報酬に対する負担割合が1.35%から1.54%に増加するのに対し、共済組合 は1.09%から1.54%に増加するため、より大きな負担を感じることが予想されます。

健康保険組合連合会 2019年度健康保険組合予算早期集計結果と「2022年危機」に向けた見通し等について
https://www.kenporen.com/include/press/2019/201904222.pdf


 逆に負担減となるのが 協会けんぽ です。下記表2を見ると、協会けんぽ の負担割合は、1.95%から1.54%に減少しています。
 総報酬割 完全施行後、協会けんぽ は1,870億円の負担減となり、その分を 健康保険組合 が980億円、共済組合 が890億円をそれぞれ多く負担すると見込まれています。

総報酬割2
表2 社会保障審議会第69回介護保険部会 費用負担参考資料

厚生労働省 社会保障審議会第69回介護保険部会 費用負担参考資料
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000143993.pdf

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