子どもは天使
バスに乗って君の家に来る途中だったんだけどね、ある停留所から何人かお客が乗って、さあ出発っていう感じで、運転席の横のドアが閉まりかかって走り出した。その瞬間、小さい男の子がパッと飛び乗ったかと思うとバタンとドアが閉まったんだ。一瞬ヒヤリとしたよ。きっと運転手のおじさんが怒鳴りつけるなと思って、じっと見ていると、おじさんは詩うようにこう言ったんだ。
「ぼうや、翼をはさまなかったかい?」
すると男の子は、にこりとして首を軽く横に振って席に座ってね。あの時、みんな優しい顔していたな。僕も一日中、幸せな気持ちだった ・・・。
子どもは天使・・・
そんな言葉がドイツには根付いているという。学生時代の恩師から聞いた話だ。
幼い頃、どんぐりをいっぱい集めて森を作ろうとした。庭に大きな穴を掘って、ゴジラが落ちる瞬間を影で待ち続けた。煙突がないので、サンタのおじさんが家に入ってこれないと大泣きしたこともあった。そう言えば、将来の夢は、社会保険労務士ではなくウルトラマンレオだった。
でも、時間を追うごとに色々なものが見えなくなってきました。あの時は確かに見えていたけれども、今はもう見えないもの。それらは、私がどんなに努力をしても、もう目の前に現れてはくれません。そしていつの間にやら役割が変わり、子ども達のために、夢を見る手助けをすることとなってしまった。
知性 溢れる ’’かんぽうやくの人’’
感性 豊かな ’’すぺーすごじら’’
身近な憧れは ’’ようちえんのせんせい’’
大事な告白はまだ ’’ひみつ’’
太陽のような笑顔の ’’おはなやさん’’
月影のような存在の ’’ほんだな’’
興味の違いはあるにせよ、みんなみんな、ピカピカな翼を思いっきり広げて夢を見ています。
今はあまり気に留めなくなっている、幸せな気持ち、純粋な心、大切な人・・・そういう自分にとってかけがいのないものを改めて教えてくれる存在、それが子どもだと思います。