うちの子だけ、
給食を食べさせて欲しくないんです。
プルルル、プルルルル…。
「はい、イマジン保育園の蓮村です。」
『あ、ちきゅう組の松田です…。』
「こんにちわ、琴ちゃんのお母様ですね。」
『あ、そうです。』
「どうされましたか?」
『あのぉ…園長せんせい、うちの琴音のことで相談したくて…、今日お時間をいただけませんか?』
「あ、はい。大丈夫ですよ。」
『ありがとうございます。お迎え前の3時40分くらいでいいですか?』
「ええ、大丈夫ですよ。どう言った事ですか?」
『いえ、ちょっと電話では…。』
「あ、はい…。」
「お母様、どうぞお入りください。」
『すみません、お時間を取っていただいて…。』
「いいえ。ご相談の内容が他の人に知られることはありませんから、ご安心してお話しください。」
『あ、はい、ありがとうございます。』
「慣らし保育が終わっても、毎日、琴ちゃん元気いっぱいで楽しそうですよ。」
『はい。旦那が帰ってくると、その日にあった出来事を、うちでもずっと話しています。』
「ちきゅう組の男の子にも人気があるみたいですよ。何か、心配なことがありますか?」
『あ、ええ。食べ物のことなんですけど…。』
「アレルギー症状がでましたか?」
『いえ、キュウショ…、うちの子だけ給食を食べさせないことはできませんでしょうか?』
「は…?」
『うちの子だけ、お弁当を持たせたいんです。』
「え?あ、いや、もしアレルギーがあれば除去食も提供しますし…。」
『いや、そうではなくて…、うちの子だけ、給食を食べさせて欲しくないんです。』
「どうされました?」
『・・・・。』
「みんなで同じものを楽しく食べる”食育”の観点からも、できればさせたくありませんが…」
『・・・・。』
「でも琴ちゃん、余ったおかずをお代わりまでして、いつも美味しそうに食べていますよ。」
『…それが、一番困るんです。』
「は?」
『琴音には…、あまり太らないように食事制限をしてまして…。』
「え?」
『ホントの事を言うと、保育園の給食が美味しすぎて、私の作った料理を食べてくれないんです。』
「いや、その・・。」
「ママぁー!」
『琴音、今日も保育園楽しかった?』
「うん!シュウマイとビーフストガリフがでた!」
『あ、そう、よかったね。』
「うん!」
『じゃあ、帰ったら、もっと美味しいものをママが作ってあげるから、何が食べたい?』
「オリジンべんとう!」